2005/12/12

  2005年12月12日(月)
 2006年の相場を読む
    (今週から3回にわたって、来年の相場と銘柄を述べる)
 
(その一)株式続伸、国債急落、円反騰。

(一)長期金利上昇で、国債急落、円高へ。

(1)日銀総裁が公然と竹中大臣に反旗を翻した。ジャブジャブ金融を打ち止めし、ゼロ金利を解消する決意を固めた。もはや日銀がぐらつく事はない。
(2)竹中大臣はかねてから景気回復が確認できないのに金融政策を変更するのは時期尚早だと日銀を強く批判していた。
(3)竹中大臣を初めとするエコノミストは官庁統計のみを重視するが、官庁の統計データはすべて「過去」の事実である。
(4)日銀は全国の支店網を動員して民間の景況感を探っているから、経済の「現状をリアルタイム」で把握している。
(5)しかし株式市場や不動産市場では投資家が財産を賭けて真剣勝負で「将来」予測を競っている。
(6)すなわち、竹中大臣は過去を見、日銀は現在を見、相場は未来を見ている。
(7)クラブ9は少数意見に屈せず、自分の目、自分の耳に賭けたコラムである。未来は過去の延長線上にはない、未来は常に意外性の中にある、と私は思う。
(8)世界の金融市場のマネーの流れを見れば、巨大な過剰流動性、圧倒的な資産インフレが進行し、アメリカに次いでヨーロッパでも金利は上昇過程に入った。世界の金融市場は一体であり、マネーには国境がない。日本の金利上昇は歴史的必然である。
(9)15年ぶりに金利が上昇すれば、国債の暴落、円の反騰、株価の高騰が次第に鮮明となるだろう。

(二)弱気論に汚染された日本の機関投資家。

(1)250兆円の巨額を運用する年金は総資産に対する株式の保有比率がわずか11%に過ぎない。しかも値上がりして11%を超えた株式を片端から売却している。これでは株価がいくら暴騰しても値上がりの恩恵をわずかしか受けない。
(2)小泉首相は年金問題がこれから最大の政治的課題になると述べているが、もし年金が過去3年間に11%、28兆円の保有株式を売らずにそのまま保有していれば、日本の株式の時価総額は220兆円から500兆円に大膨張したから、年金は30兆円の利益を蓄積し、年金問題はすでに解決していたはずである。
(3)大手生保、例えば日本生命は株式の構成比を15%に圧縮し、更に7%まで縮小すると言明している。これでは千載一遇(1000年に1度しか巡り会えない)の大もうけのチャンスを逸し、ますます外資系生保に圧倒されるだろう。
(4)銀行は15年前に全上場株式の22%を支配していたが、特に竹中金融庁長官の時代に行政指導を受けて持ち合い解消を急ぎ、7%以下に圧縮した。竹中行政の優等生となったりそな銀行の細谷社長は兄弟会社である野村證券や松下グループを初め取引先の株式を底値で片端からたたき売った。当時私はりそなの暴挙を再三厳しく批判したが、今となっては、りそな銀行が失った株式の含み益と取引先の信用は挽回不能で計り知れないくらいに大きい。
(5)3年前に、銀行が買い手不在で売却不能となった3兆円を日銀が買い取った。日銀はその3兆円が生み出した含み益をぜひとも開示するべきである。そうすれば金融行政の過ちと機関投資家の無能が白日の下にさらされるだろう。
(6)株式投信の運用もひどい。過去3年間に株価は2倍以上になったが、プロ中のプロが運用する株式投信はろくな成果を上げていない。
(7)しかし竹中行政の失敗は株式の含み益の喪失に止まらない。金融機関は株式を売却した資金で国債を買った。売った株式が暴騰する一方で、買った国債の暴落が今から始まる。
(8)長期国債の1.5%の利回りは4%台を目指すだろう。標準的な10年国債は10年分の金利を織り込むから、長期金利が1%上昇すれば10%の暴落となる。すなわち10兆円の国債を保有する金融機関は長期金利が1%上昇するごとに1兆円の損失を抱える。
(9)よって来年は銀行株の買い上がりは危険である。

(三)国債が暴落すれば銀行株は売り。

(1)来年は異常なゼロ金利の時代が終わり、国債相場の暴落は必至となる。
(2)国債は株式や不動産のような銘柄の多様性がないから、相場は一方通行となり、売り気配だけで暴落する。
(3)アメリカの国債は世界中の投資家が保有しているが、日本の国債は国内の機関投資家が大半を保有している。外国資本は容赦なく先物市場で国債の空売りを仕掛けるだろう。
(4)金融機関は株式と同様に評価損益を決算期末に計上しなくてはならない。日本の郵貯、年金、生保、銀行はこれまでは評価益を計上してきたが、今後は巨額の損失を計上するだろう。
(5)国債が暴落するときは景気が回復する時だから、株価や地価は高騰する。しかし日本の金融機関はそろって株式や不動産を徹底的に売ったから、国債で発生した損失を埋め合わせる手段がない。
(6)来年は銀行株を買えない。
(7)外資系証券が最近一斉に銀行株の格付けを引き上げたが、売り抜けるための強気と見える節がある。もうけるために彼らは手段を選ばない。

(四)竹中大臣の蹉跌。

(1)デフレが深刻化するにつれて株式や不動産をリスク資産と断定する竹中大臣の主張が説得力を持ち、エコノミストが追随した。
(2)借金で土地や株を持つ企業、その企業に融資する銀行を竹中大臣が倒産へ追い込んだから、金融機関や産業界ではインフレ時代の経営者が皆無となり、資産デフレ論に汚染された経営者が支配する時代となった。
(3)デフレ時代が15年間も続くと、日本の世論を形成する各界のリーダーは皆インフレ時代を知らない世代となった。株式や不動産が値上がりする時代は2度と来ないという弱気論が日本の常識となった。
(4)マスコミはアメリカが竹中政治を全面的に支持していると太鼓判を押した。
(5)しかし現実には日本の機関投資家と企業がたたき売った株式や不動産を、ユダヤ資本が一手に買いまくった。
(6)手練手管のユダヤ資本は言う事とやる事が正反対であったが、純情可憐な日本のエコノミストは表も裏も弱気一色であった。「竹中大臣は外資の手先」という批判をマスコミが無視し、抹殺した。
(7)竹中大臣に売らされた株式が暴騰し、買わされた国債が暴落したとき、竹中大臣の評価は暗転する。
(8)私は終始一貫竹中大臣のデフレ政策を批判し、ひたすら資産インフレを追求するユダヤ資本に学べと主張してきた。事実を見れば勝敗の帰趨はすでに明らかである。来年はエコノミストのミスリードと機関投資家の無能が批判される年になるだろう。

(五)相場観と銘柄観。

(1)今週からは来年を見越した投資が必要である。
(2)来年は株高、国債安、円高となる。
(3)資産インフレの指標は金相場である。急騰した金は短期的な波乱を免れないが、押し目は買いのチャンスとなるだろう。
(4)住友金属鉱山を指標株と見る私のスタンスは変わらない。
(5)既報銘柄ではNIF-SMBC、MISAWA、中外鉱が順調。高値更新目前の富山化学とアライドに注目。