2005/9/26

  2005年9月26日(月)
   なぜ、今、低位株人気か。

(一)主役はオールドエコノミー。

(1)今回の相場の基調は資産インフレ買いである。
(2)今、世界中で株式、不動産、商品が連鎖して高騰し、激しいインフレが進行している。直近では石油が暴騰した。産油国に巨額のマネーが集まり、そのオイルマネーが日本の株式に集中投資している。これが日本株独歩高の背景である。
(3)アメリカはインフレを抑制するために連続11回も公定歩合を引き上げた。
(4)そんな時に、日本の小泉政権だけはデフレ政策を集中的に断行し、厳しい資産デフレが進行した。竹中大臣のデフレ政策を支持する人たちにはなぜ外国人が日本の株を買うのかが理解できないから、外国人の一手買いにすべての日本勢が売り向かっているのである。空売りは空前の規模に達し、減少する気配がない。
(5)私は弱気論者へ警告を発し続けた。弱気を捨てるためには小泉内閣のデフレ政策の欠陥に気がつく必要がある、と主張し続けた。
(6)小泉内閣の構造改革はすべてデフレ政策である。竹中大臣は不動産や株式をリスク資産と断定し、銀行の不動産担保融資を不良債権と見て即時回収を命じた。不動産と株式が大暴落を演じたのは竹中政策の必然的な結果である。
(7)金融、不動産、ゼネコン、製造業、サービス業等のオールドエコノミーは事業の性格上、店舗、不動産、工場、設備等の資産を必要としたから、不動産や株式などの資産の暴落は深刻な打撃を与え、倒産企業も続出した。
(8)窮地に陥ったオールドエコノミーに対して、インターネット、エレクトロニクス、ソフトウェア等、不動産を必要としないニューエコノミーは無借金経営を推進する竹中政策の優等生となり、株価が高騰した。
(9)ところが今や、株式市場の人気は完全に逆転した。構造不況に陥っていたオールドエコノミーから暴騰銘柄が続出し、ニューエコノミーのハイテク株は人気の圏外におかれている。

(二)外国人買いに売り向かう日本勢。

(1)なぜこうなったかといえば、竹中大臣がダメだと決めつけたオールドエコノミーの株式を外国資本が一手に、大量に、徹底的に買っているからである。
(2)外国資本は株式ばかりか、テナントビル、ゴルフ会員権、温泉旅館、スキー場など、竹中大臣がリスク資産と断定して銀行に融資の打ち切りを命じた企業を片端から買収した。
(3)外国資本が日本の斜陽企業に目をつけた理由は明快である。世界中で資産インフレが進行している中で、日本だけが唯一資産デフレに落ち込んでいるから、不動産、株式、設備、人材等の資産を保有する企業が極端に割安であったからである。外国資本にとって日本は夢のような「ラストリゾート(最後の楽園)」に見える。
(4)しかるに日本の投資家は小泉内閣のデフレ政策に盲従して、斜陽産業、斜陽企業を一斉に売り向かった。
(5)その結果は四季報を見れば一目瞭然である。かつて大株主ベスト10を独占していた銀行、信託銀行、生保、損保等の金融機関は姿を消し、外国資本が上位を独占している。現在の傾向が続けば、1年以内に日本の主要企業はユダヤ資本に買い占められるおそれがある。
(6)過去3年間に日経ダウは底値から2倍に暴騰し、外国人投資家は濡れ手に泡のぼろもうけを謳歌しているが、日本の主要な株式投信はまだ水面下から脱出できない。他の機関投資家も推して知るべしである。
(7)竹中大臣が売れと命じた資産が反騰に転じたから、銀行、不動産、ゼネコン、鉄鋼、非鉄、石油、機械、プラント、建設、繊維、小売り等のオールドエコノミーが全面高を演じたのである。

(三)なぜ、今、低位株人気か。

(1)中でも住金や三菱自動車など、倒産の瀬戸際に追い込まれていた低位株が暴騰した。竹中大臣の側近として権勢を振るった木村剛がつぶせと主張した企業も急騰した。
(2)小泉内閣のデフレ政策を信奉している人たちには、世界中で進行している資産大インフレの現実が見えない。
(3)それならばなぜ、今、低位株人気なのだろうか。
(4)第1は、取引先の環境好転である。不況から好況に転じるとき、或いは利益が水面下から水面上に浮上するときは、特に限界企業の株価が暴騰しやすい。日揮や千代建の大暴騰は石油相場の暴騰と連動しいぇいる。
(5)第2は、商品相場の好転である。80年代のバブル期に新日鐵は800円前後でファイナンスを連発した。今や鉄鋼相場が暴騰し、高炉4社はバブル期の最高益を更新する勢いだから、株価の回復はまだ始まったばかりといえる。
(6)第3は、資産インフレの復活である。デフレ期に不良資産、不良債務と見られていた設備や工場や不動産が、今では優良資産に一変した。倒産した企業でさえも保有資産に着目した外国資本が買収競争を演じている。
(7)これらの現象はすべて資産インフレの復活と進行を先見している。
(8)私は四年前に「不動産が値上がりする(主婦と生活社)」を出版し、オールドエコノミーは宝の山だと主張してきた。現在の低位株人気は予想通りで、簡単には衰えないと思う。

(四)中外鉱(1491)。

(1)中外鉱の出来高が急増し、株価も動意付いてきた。低位株人気の一例として、好悪材料を検証してみたい。
(2)中外鉱は赤字決算が続いており、単独の累積赤字は25億円に達している。黒字転換の目途はまだ立っていない。四季報を見る限り株価が上がる理由は乏しい。
(3)しかし5億円の借金に対して380億円の株主資本があるから、決算が赤字でも倒産のおそれは先ずない。
(4)もっとも380億円の資産が劣化していれば危ういが、中外鉱自身は上場会社として常時公認会計士の監査を受けていると述べている。カネボーのような事件もあるにはあるが、公認会計士を疑えば、株価は成り立たない。
(5)中外鉱は伊豆半島に金鉱山を保有しているが、不採算のため閉山し、現在は使用済み金の回収、再生を行っている。金相場の急騰で利益率は改善したと推定されるが、まだ金鉱山の含み益を評価する段階ではない。
(6)ただし、金相場がさらに暴騰すれば休止中の金鉱山が復活する。国内の金相場は過去3年間に1グラム当り1,000円割れから、現在は1,800円に急回復した。しかし中外鉱は金鉱山を復活させる金相場の目途を3,000円としているから、前途はまだ遼遠である。ちなみに日本の金相場は1980年に6,000円台の史上最高値を記録している。
(7)今年は商品相場が次々に史上最高値を更新したから、市況関連株から人気株が輩出した。しかし中外鉱が黒字転換のめどをつけたわけではない。現在は投機人気が先行している。
(8)私は現状で中外鉱の株価を判定する自信はないが、低位の限界企業の一つとして好悪材料を公平に並べてみた。

(五)住友金属鉱山(別子)。

(1)別子が資産インフレ相場の指標株になるという私の予測は現在までは的中している。今後の株価はもちろん金相場次第である。今回も別子の優位を示すポイントを指摘しておきたい。
(2)ニューヨーク市場の金鉱株の指標銘柄はニューモントマイニング(Newmont Mining)である。株価は上昇しているが急騰とまではいえない。その他の金鉱株は大して値上がりしていない。
(3)株価が金相場に連動しない理由は明快である。外国の金鉱山会社は、金相場が自山鉱の損益分岐点を上回るとスイスの銀行から金の現物を借りて金市場で売却し、リスクをヘッジした上で、売却した資金を用いて採掘する。
(4)ヘッジしてしまっているから、その後の金相場の値上がりの恩恵も値下がりの損失も受けない。しかし金相場が上昇すれば所有する金鉱山の含み益が増加するから、株価も次第に金相場との連動性を深めるだろう。
(5)金市場全体から見れば、海外の金鉱山会社は採掘予定の金をすでに先物市場で売っているから、新産金の供給はあまり増えない。
(6)別子が保有する菱刈鉱山の金の含有率は海外の鉱山の10倍以上と推定されるから、他社の含み益とは大差がある。
(7)期間利益と含み益がストレートに金相場に連動するのは別子だけだから、金相場が上昇すればするほど別子は世界の金鉱株人気の指標となるだろう。