2005/9/5

  2005年9月5日(月)
   住友金属鉱山(別子)における資産インフレの研究。 

(一)別子は資産インフレの指標株。

(1)今回の外国人買いの背景を私は次のように予測、説明してきた。
   1: 人口超大国の台頭。
   2: 石油を筆頭に商品相場が高騰。
   3: 石油市場で膨張した資金が株式市場に流入。
   4: 株式市場で膨張した資金が石油市場に環流。
   5: 石油相場のさらなる暴騰。
   6: 東京株式市場に波及。
   7: 石油から金へ飛び火。
(2)予想はほぼ事実となり、先週ニューヨーク金は今年の高値を一気に更新した。
(3)目前の昨年高値457ドルを突破すれば、1980年に記録した史上最高値887ドルまで節目がなくなる。
(4)金の高騰が非鉄に波及すれば、別子は次の通り指標株の条件を満たして大相場に発展する可能性が高い。
   1: 第1に、保有する金、銅、ニッケル鉱山の含み益は昨年3月末の2兆円から、今年3月末に3兆円へ、1年で1兆円も激増した。
   2: 第2に、主力3品目の相場が10%上昇するたびに、年間利益は30億円増加するが、含み益は3000億円増加する。資産インフレがもたらす含み益は年間の増益額の100倍に達する点に注目されたい。これが資産インフレのすさまじいインパクトである。
   3: 第3に、住友財閥のルーツは四国の別子銅山である。それゆえ住友金属鉱山は現在も「別子」と呼ばれ、住友財閥の総本家として、グループの株式を大量に保有している。その含み益も大きい。
   4: 第4に、しかし3兆円を超える含み益に対して、株式の時価総額は5000億円に過ぎない。
   5: 第5に、時価総額と含み資産とのかい離が広がれば広がるほど、外資の買収の標的となる。前期末の株主構成は外国人持ち株28%、安定株主32%であったから、私は再三早期に安定工作を進める必要があると指摘したが、経営者が反応した形跡がない。直近の集中買いで外国人株主はすでに32%の安定株主を抜いたと思われる。
(5)別子は住友財閥の総本家であるばかりか、石油を持たない日本の、唯一の資源株である。経営者に自衛策の早期構築を促したい。
(6)私は現在の相場の本質を「世界的な資産インフレ」と考えているから、資産株の本命として別子の指標性を重視する。

(二)相場は相場に聞け。

(1)エコノミストは株式相場急騰の理由を景気や業績によって説明するが、それでは肝心の資産インフレの実態が見えない。
(2)エコノミストが予測の根拠とする統計データは過去の事実に過ぎない。相場は過去の事実を周知の事実として織り込んでしまっているから、エコノミストの主張は相場観ではなく、結果論、或いは結果の解説に過ぎない。
(3)株価は未知の意外性に対して反応する。意外性は常に少数意見の中にある。少数意見にはリスクがあるが、リスクを取らなければ利益もない。リスクの大きさと利益の大きさは比例する。
(4)株式市場には「相場は相場に聞け」という格言がある。相場を相場に聞けば、次のような現実が見える。
   1: 松下が上がればソニーが下がる。シャープが上がれば三洋が下がる。キャノンが勝てばオリンパスやミノルタが負ける。ハイテク関連株はゼロサムのシェア争いを演じており、現在の相場の主役ではない。
   2: ハイテクに対して、鉄鋼、石油、海運などの市況関連株は業界全部が大幅増益で、株価は全面高である。
   3: 不動産、銀行、建設機械、工作機械、石油プラントなどのオールドエコノミーも一斉に蜂起した。
   4: 中でもダイエー、大京、熊谷、長谷工、ミサワなど、木村剛がつぶせと主張し、竹中大臣が倒産寸前まで追いつめた80年代の優良企業が反転上昇している。
(5)「相場を相場に聞け」ば、15年にわたる暗い資産デフレの時代が終わり、80年代の明るい資産インフレの時代が復活する。
(6)小泉時代の終わりが始まった。

(三)小泉時代の終焉(しゅうえん)。

(1)株式市場は今小泉時代の終焉を織り込んでいる。
(2)日本を不況に陥れた原因は資産デフレである。世界中がインフレの利益と繁栄を謳歌しているときに、日本人はデフレの恐怖におびえてひたすら貯蓄に励んでいる。
(3)小泉内閣の構造改革がデフレを増幅し、経済を萎縮させているからである。郵政改革も人員整理を優先する縮小均衡政策である。
(4)「改革なくして景気回復なし」という小泉首相の一枚看板は順序が逆で、本末を転倒している。資産インフレこそ景気回復、財政再建、構造改革の特効薬である。
(5)構造改革の呪縛に縛られた人には、世界の金融市場、不動産市場、商品市場で進行している価格革命、資産インフレが見えない。
(6)これに対して、いち早く構造改革の構造欠陥に着目したユダヤ資本と、日本の勇敢な経営者、投資家は、資産インフレの利益を追求した。
(7)新規上場株を見れば一目瞭然で、不動産市場とその周辺から輩出したベンチャー企業は利益水準がけた違いに大きい。

(四)日米の年金運用に天地の差。

(1)私は石油の暴騰に次いで、金の急騰が切迫していると予想した。
(2)石油相場の歴史的な大暴騰は、年金、投資信託など、アウトサイダーが参入した結果として、進行した。中でも最も保守的な年金資金が石油に投資したという情報を私は重視した。
(3)日本の年金の超消極運用しか見ない人には欧米の年金の超積極運用は想像もできないと思うので、次に年金運用の日米格差を示したい。
   1:日本の年金は資金の過半を厚生労働省が運用している。80年代までは株式の運用で大いにもうけたが、90年以降に株価が急落すると株式性悪説が勢いを増し、特に竹中大臣の金融政策のあおりを受けて昨年までに大量売却を断行した。
   2:世界の株価が史上最高値の更新を競っているときに、年金の大量売りを浴びた東証ダウは39,000円から7,600円へ、独歩安の大暴落を演じた。
   3:年金の運用権を返上した民間の団体は、厚生省から現金による返済を要求されたから株式を全部売った。売却損を確定した年金団体の受益者は支給額を減額されて、二度と復元しない。
   4:しかし運用権を返上しなかった年金団体は今年の株価の値上がりで10兆円の利益を計上し、評価損が半減した。加入者は支給額の減額を免れる。
(4)厚生労働省は世界最大の年金基金を運用しているが、株式相場の歴史的な安値をたたき売るという醜態を演じた。それでも誰も責任を取らない。私の批判は結果論ではない。昨年1年間を通して私は「厚生労働省は株式の買い戻しを急げ。来年になればユダヤ資本に買い占められて売り玉がなくなる」と述べた。
(5)事実を見れば「運用の巧拙」は年金の死命を決する最大の要因であるが、野党も又「運用の巧拙」ではなく、赤字をいかに補填するかという議論に明け暮れている。その奇怪さはカルパースの実績と比べれば歴然としている。
(6)全米最大のカルパース(カリフォルニア州教職員年金)は、資金の大半を株式に投入し、投資先企業に取締役を派遣して経営を監視する。さらに不動産投信に投資し、日本でも不動産投信を組成した。現在は石油相場に挑戦しているという噂がある。
(7)このような年金の積極的な運用姿勢を見て、私は株式、不動産、石油で成功した年金やヘッジファンドは石油相場から撤収するよりも金相場に挑戦する可能性の方が高いと思ったのである。

(五)小泉内閣こそ抵抗勢力。

(1)私は小泉首相、竹中大臣の構造改革に終始一貫反対してきた。
(2)竹中大臣のデフレ政策によって企業や銀行や生損保や年金は保有株式を徹底的に売らされたから、昨年2月に日本のダウ平均株価は高値から5分の1に大暴落した。不動産は20年昔の水準まで大暴落した。
(3)日本のエコノミストは構造改革を支持したから、資産デフレは当然と論じたのである。大半の日本人はこれに追随したが、ユダヤ資本は暴落した不動産、株式からゴルフ場、温泉旅館に至まで、日本の資産を一手に買いまくった。
(4)世界中の資産インフレに乗じて大もうけしたユダヤ資本にとっては、世界で唯一大暴落した日本の資産はただみたいに安い。まさしくラストリゾート(最後の楽園)であった。
(5)私は小泉内閣こそ世界的な資産インフレの潮流に棹さす抵抗勢力だと思う。
(6)小泉首相が構造改革を叫べば叫ぶほど日本の資産がユダヤ資本に浸食される。現に過去1ヶ月間に株式市場では又してもユダヤ資本が一方的に買い越し、全ての日本勢が大幅に売り越した。
(7) ユダヤ資本が世界の常識に従って買いまくる一方で、時代錯誤の独裁者に盲従する日本勢はデフレを恐れて弱気を払拭できない。
(8) 私は今回もユダヤ資本が勝つと思う。