2005/8/16

  2005年8月16日(火)
     資産インフレの時代。

(一)暴騰した株式相場。

(1)先週私は「政権交代で株価は上がる」という見出しで、明快に強気論を述べた。予想通り株式相場は高騰したが、石油や金の急騰も予想通りであった。
(2)すなわち株式ばかりか不動産、商品等の実物資産がそろって高騰する「資産インフレ時代」が到来したのである。騰勢はゴルフ会員権や絵画にも及ぶだろう。
(3)政治的にも、脱小泉時代が始まると思う。この点も重要だから、(五)以下で述べておきたい。
(4)株価は今年、世界中で高騰しており、日本だけが低迷していた。
(5)住宅も今年、世界中で高騰しており、日本だけが値下がりしていた。
(6)世界的な資産インフレの中で、日本だけが資産デフレに陥っていたのは、小泉内閣が時代錯誤のデフレ政策を強行したからである。
(7)私は資産インフレという世界の潮流に早晩日本が飲み込まれると見ていたから、今回の政変がきっかけになると直感したのである。
(8)果たして先週、内外の投資家は一斉に蜂起した。
(9)世界第二位の日本の株式市場は過小評価され過ぎていたから、世界の株式投信が一斉に日本株の組み入れ比率を引き上げた。空前のスケールの外国人買いはその結果である。

(二)株価の行方。

(1)外国人による日本株のポジション調整が始まったからには、第二弾、第三弾の買いが予想される。
(2)先週は先ず先物を買って日本株のポジションを確保したから、先物と連動する大型株が中心であったが、今後は個別銘柄も物色するだろう。
(3)現在、世界の投資資金は次の経過で膨張している。
 1.人口超大国の台頭で、石油を筆頭に商品相場が高騰した。
 2.産油国が大金持ちになり、利益を世界の株式に投資した。
 3.世界景気が拡大し、石油、石油化学、鉄鋼、非鉄、海運、建設機械等の構造不況業種の業績が好転した。
 4.株価の高騰で膨張した資金の一部が石油市場に環流し、石油相場が大暴騰した。
 5.産油国や新興企業の投機資金が世界の不動産、住宅を買いあさった。
 6.株式市場、不動産市場、商品市場で資産インフレが連鎖して進行し、投機資金は膨張一途である。
(4)軽薄なマスコミは多数意見に同調して小泉支持を叫んでいる。
(5)しかしクラブ9がコラムの冒頭に掲げている投資の第1原則は「相場の世界では常に少数意見が勝つ」である。私は少数意見であることを恐れず、誇りとしている。
(6)クラブ9の投資の第2原則は「相場とは少数意見が多数意見に変化する課程」である。すなわち資産インフレ論は日本では少数意見で、これから多数意見に変わると私は思っている。
(7)日本人は構造改革の呪縛から解放されて、これから750兆円の預貯金を株式や住宅や金に投資するだろう。それが世界の資本主義社会の普通の市民の普通の行動である。

(三)相場反落のリスク。

(1)私は資産インフレがどこまでも続くと主張するつもりはない。
(2)強気論が多数意見となるにつれて反落のリスクが大きくなる。
(3)1.5兆円の空売りが急減したときも要注意である。
(4)首都圏で巨大地震が発生するという突発的なリスクもある。
(5)しかし日本では750兆円の巨大な資金が預貯金に待避しており、ようやく株式や住宅に向かい始める所である。
(6)銀行の窓口では、預金に代わって株式投信、不動産投信、商品投信などが人気を集めるだろう。
(7)郵便局も、民営化を待たずに追随するだろう。民間の反対を押し切って宅急便を始めた郵便局で、投資信託が売れないはずがない。小泉首相が民営化しなければできないと主張していることは殆ど今すぐできる。
(8)今できないのとすれば銀行が反対しているからである。しかし「民業圧迫」という銀行の反対姿勢は郵政が民営化しても変わらない。

(四)金相場と住友金属鉱山(別子)(5713)。

(1)石油相場は需給関係だけでは説明できない水準に暴騰した。
(2)過去20年間に世界の株式市場や不動産市場や国債市場で大膨張した資金量に比べて、商品市場の資金量は低迷し、商品相場は相対的にきわめて割安であった。
(3)石油の大暴騰は商品相場の歴史的な修正運動の先行指標だろう。
(4)それゆえ私は、石油で成功した投機資金が次に金に流入し、ついには商品全体に及ぶと予想した。
(5)果たして、過去2週間でニューヨーク金は450ドル台へ、30ドルも急騰した。金は870ドルの史上最高値を目指す可能性がある。
(6)金相場次第で、別子の人気化は必至となる。
(7)東洋経済の四季報は別子の含み益を3兆円と試算している。そのうち1兆円を金とすれば、金相場は2週間で30ドル、7%値上がりしたから、含み益は金だけで 700億円も増加した。
(8)別子の3本柱である銅とニッケルも高値圏で突っ張っている。
(9)別子の株式の時価総額は、2週間で4,400億円から4,700億円へ300億円増加したが、3兆円の含み益に比べれば、時価総額はあまりにも過小である。
(10) 別子の株主構成は安定株主32%に対して外国人が27%に達している。金、銅、ニッケルの相場がさらに上昇すれば、外資による買収が起こりうる。すでに昨年来、金鉱山の国際的買収、合併が進行している。別子もアラスカの金鉱山を買収した。
(11)金は有史以来人類の富の象徴であった。しかし今期の利益を前期並みの65円とすれば、株価収益率は13倍にも満たない。資産インフレの時代に、不思議な安値圏に放置されている。

(五)小泉首相は孤独な狂気の独裁者。

(1)「自由民主党」は「小泉独裁党」に堕落した。今や自由民主党には「自由」もなければ「民主」もない。狂気の独裁者にひれ伏す「独裁党」である。
(2)小泉首相は竹中大臣を手先に構造改革を断行したが、その手法は国家権力を動員して構造改革を妨げる銀行や企業を倒産に追い込む恐怖政治であった。
(3)今回の選挙でも小泉首相は恐怖の独裁権力を行使した。すなわち郵政民営化に反対した党の議員を公認せず、対抗馬をぶつけて落選に追い込むという狂気を演じたのである。
(4)大臣と党役員にはイエスマンばかりを任命したが、それでも解散を決議する閣僚会議で4人の反対者が出た。大銀行や大企業を倒産に追い込み、長年の同士である政治家を抹殺するためにマスコミを動員し、大衆を扇動して魔女狩りに駆り立てる手法は独裁者に共通している。
(5)ヒトラーもスターリンも毛沢東も国民に改革を訴えて圧倒的な人気を集めた。しかし一度政権を握ると、ヒトラーは密告によって500万人のユダヤ人を殺し、スターリンも密告によって2000万人の同志を殺し、毛沢東は紅衛兵を用いて5,000万人のインテリ、金持ちを殺した。北朝鮮では今でも国民が生き延びるために独裁者を賛美している。
(6)抵抗者、反対者を抹殺して独裁権を確立する政治手法は独裁者に共通で、一度権力を握れば本来の狂気が牙をむく。森前首相は小泉首相に翻意を促したが、異常者だと明言して、さじを投げた。顔面を引きつらせて構造改革を叫ぶ首相はヒトラーと似ている。精神科医の診断を問いたい。
(7)軽薄なマスコミ、評論家、財界人は改革断行のためには独裁者が必要だと持ち上げている。ドイツでも彼らがナチスの独裁へ道を開いた。

(六)構造改革はデフレ政策。

(1)小泉首相は構造改革なくして景気回復なしというが、企業に借金の即時返済を求めて土地や株の売却を強制し、改革の名によって人員整理を図る政策は、皆デフレ政策である。
(2)構造改革によって資金を断たれた日本企業は株式と不動産をたたき売って大損害を被り、大もうけしたのはユダヤ資本だけであった。
(3)日本人は世界ダントツの750兆円の預貯金を蓄積したが、デフレ政策を恐れて株や住宅を買わず、消費を控えるから、景気は好転しない。
(4)反対に、アメリカ人は貯金を持たないが、住宅や株を買ってその値上がり益で大金持ちになり、借金で消費するから、景気は好調である。
(5)日本は世界ダントツの貿易黒字を蓄積したが、景気は沈滞している。アメリカは世界ダントツの貿易赤字を垂れ流しているが、景気は好調である。
(6)現に80年代までは日本人も現在のアメリカ人と同じライフスタイルを持ち、ローンで住宅やゴルフ会員権を買って人生を謳歌していた。
(7)小泉首相は離婚し、心を許す遊び友達を持たない。孤独な禁欲者が顔面を引きつらせて構造改革を絶叫し、日本人をデフレ恐怖症に追い込んだのである。
(8)ナチスを率いて反対者を殲滅したヒトラーを、当初はドイツのマスコミと世論が熱狂的に支持した。現在の小泉自民党と酷似している。