2005/8/8

  2005年8月8日(月)
     政権交代で株価は上がる。 

(一)世界同時住宅ブームの背景。

(1)8月4日付日経金融新聞は世界同時住宅ブームの背景を「あふれるマネーが国境を破り」、各国の中央銀行の金融政策だけでは「価格の押さえ」が利かなくなっていると報道している。
(2)エコノミストは5年以上も前から米欧の住宅バブルの崩壊が近いと論評し、これが弱気論者の弱気の最大の根拠となって来た。しかし現実には住宅ブームは崩壊どころか国境を越えて世界各地に波及し、今では東ヨーロッパにまで及んでいる。
(3)住宅ブームがどこまで拡大し、いつ崩壊するかは私にもわからない。しかし強気論、弱気論を主張する前に、投機資金がいかに膨張し、いかに増幅して行くかという現実を直視しなければ、相場の行方は見えない。
(4)世界的な住宅と株価の値上がりは石油の暴騰が大きなインパクトを与えている。
 1.石油の暴騰によって産油国に巨額の黒字が集中し、
 2.その黒字が欧米や日本の株式市場に流入した。
 3.ヘッジファンドは株価の高騰によって得た利益の一部を石油に投資した。
 4.石油市場にアウトサイダーの投機資金が流入し、石油がさらに暴騰した。
 5.産油国や石油関連企業は大もうけし、ヘッジファンドの投機資金がますます膨張した。
 6.石油成金は世界各地で住宅に投資し、住宅価格が上昇した。
 7.住宅ブームでもうけた個人は住宅を担保に借金し、大胆に消費し、株を買い、もっと大きな家や2軒めの家に投資した。かくしてオイルマネーはスパイラル状に拡大し、資産インフレを加速し、景気を押し上げている。
(5)最近ではロシアの石油成金が東ヨーロッパの不動産に投資し、相場を急騰させている。
(6)中国やインドの高度成長によって生まれた新興成金もアメリカやイギリスの住宅に投資している。
(7)アメリカの住宅ブームはアメリカ人の投機だけが原因ではない。世界の株式、不動産、石油の値上がりが相互に値上がりを刺激し、スパイラル状に膨張している。
(8)人口超大国の高度成長が続き、商品相場の高騰が続けば、資産インフレは破綻するどころか、もっと拡大する可能性が高い。

(二)日本の資産デフレは世界の例外。

(1)世界中で日本だけは資産デフレから立ち直れていない。
(2)チャート1でアメリカ、イギリス、日本の株価を比較されたい。高騰する米英の株価に対して日本だけが高値から3分の1の安値に低迷している。

(3)住宅価格の格差はさらに大きい。アメリカ、イギリスの2桁上昇は10年間も継続しているが、同じ期間に日本は1970年代の水準まで暴落した。
(4)株価と住宅が暴落を続けた結果、少子高齢化で日本の住宅は二度と上がらないという弱気論が常識となった。
(5)しかし人口の減少は先進国共通の現象である。中国でさえ、人口の減少が始まった。
(6)日本の異常な資産デフレは竹中大臣の誤った金融政策の後遺症である。竹中大臣はハードランディング(強制着地)政策を強行し、銀行や企業に対して不動産と株式をたたき売りさせた。買い手不在となった不動産は凄惨な暴落の連鎖に陥り、担保力が激減して多くの銀行と企業が倒産に追い込まれた。
(7)その結果、銀行は不動産担保の融資を拒み、企業は不動産や株式をたたき売ってキャッシュポジションの改善に走り、国民はひたすら貯蓄に励むようになったのである。
(8)竹中大臣の構造改革によって暴落した不動産と株式をユダヤ資本が一手に買い向かい、巨額の利益を独り占めにした。「竹中大臣はユダヤ資本の手先」という批判は、現実に照らせば正しい。
(9)世界ダントツの750兆円の預貯金を蓄積した日本人は、株を買わない、住宅を買わない、消費も節約するという世界でまれな弱気社会を形成した。異常な弱気社会は異常なデフレ政策から生まれたといわざるを得ない。

(三)資産デフレにおびえる日本人。

(1)前項で私は日本の資産デフレが異常であり、世界的な資産インフレが正常だと述べた。
(2)アメリカ人は預金を持たないが、その代わりに株式と住宅に投資して大金持ちになった。アメリカ人は預金がなくても大胆に金を使うから、アメリカは貿易収支がいくら赤字になっても、景気は好調である。
(3)これに対して日本人はひたすら貯金して、金を使わないから、日本人がいくら金持ちでも、貿易収支がいくら黒字でも、景気はよくならない。
(4)小泉首相は郵政3事業を民営化すれば、貯金は投資に回ると主張しているが、それは社会主義国の発想である。資本主義社会の市民は住宅や株式が下がると思えば貯金するが、上がると思えば、貯金をはたき、借金してでも投資する。
(5)日本人が貯金ばかりするのは、小泉・竹中政治が日本人を弱気に追い込んだからである。構造改革を徹底的に断行しなければ景気は立ち直らないという政治的脅迫が日本人を金縛りに、株式や住宅を買うという意欲を凍り付かせたのである。
(6)国家が権力によって社会構造を変えるという思想は社会主義国、独裁国家の思想であって、資本主義国、自由主義国の思想ではない。
(7)自由で民主的な国家は「国民の生命と財産を守る」ことを唯一絶対の政治目標としている。しかるに小泉政権は国民の財産を守るどころか、株価と地価を暴落させる政策を強行したから、日本人は現金のみを頼り、物を買うことを恐れるようになったのである。

(四)日本にも資産インフレ時代が来る。

(1)国家が大赤字でも、日本人は世界1の大金持ちである。郵便局には350兆円の貯金があり、銀行には400兆円の預金がある。
(2)私は拙著やコラムを通して、財政資金を使わなくても民間資金を活用すれば金融不況を克服できると主張して来た。
(3)すなわち
 1.銀行が不動産投信を大量に設定して暴落した不動産を片端から買い取る。超高利回りの不動産投信を国民はもろ手をあげて歓迎する。
 2.企業はバブル時代に増資しすぎた株式を持ち合いによって凍結していたが、持ち合い株を相互に買い取り、消却してしまう。
 3.そうすれば不動産と株式は需給関係が改善して反騰に転じる。
(4)不動産投信と自社株買いは私の発案ではなく、アメリカで成功したシステムで、これこそ資本主義社会の王道である。
(5)遅まきながら、不動産投信の資金量は10兆円以上に急増して商業用不動産が反騰に転じた。自社株買いは年間1兆円以上に拡大して株価が底入れした。
(6)政府がもし構造改革ではなく上記の政策を推進していれば、日本でもアメリカと同様に資産インフレが進行し、日本人は大金持ちになっていた。
(7)今からでも、政府が資産インフレへの期待を盛り上げれば、押さえつけられていた住宅と株式は急騰する可能性が高い。例えば日本人が750兆円の預貯金の10%、75兆円を株式に投資し、同額を住宅に投資すれば、資産デフレはあっという間に資産インフレに変わる。東証ダウの高値更新も夢ではない。
(8)そうなれば日本人は大金持ちとなり、消費が伸びて景気が好転する。税収入が増えて財政赤字が縮小する。

(五)政権交代で株価は上がる。

(1)解散、総選挙で政権が変われば、誰が次の政権を担っても、デフレ心理がインフレ心理に変わり、株価は上がると私は思う。
(2)日本人が貯蓄に走るのは住宅や株式に投資すれば損をすると思っているからで、異常な弱気心理に追い込んだ責任は小泉・竹中氏のデフレ政策にある。
(3)その証拠に80年代まで、日本人は現在のアメリカ人と同じようにローンを組んで住宅を買い、株式に投資し、ゴルフの会員権や、絵画を買い、人生の楽しさを謳歌していた。
(4)しかるに小泉政権は不動産や株式への投資を罪悪と断じ、バブル時代に成功した企業や個人を完膚なきまでにたたきのめした。その執拗で報復的な強権政治が日本人の消費意欲、投資意欲を凍り付かせたのである。
(5)そもそも政府が強権をふるって構造改革を断行するという思想は社会主義国や独裁国家の思想であって、資本主義国、自由主義国の思想ではない。
(6)民主主義国家の政治の目標は国民の「生命」と「財産」を守るという一点にある。国家が株価や地価を平然と破壊するような政治は資本主義社会とは相容れない。
(7)池田勇人や田中角栄やその他の全ての歴代首相の明るさと比べれば、小泉純一郎の政治はあまりにも暗い。
(8)企業と銀行は竹中大臣の権力に屈服したが、国会議員はついに小泉首相の独裁政治に反旗を翻した。
(9)次期政権を誰が担っても、日本人は弱気の呪縛から解放されて、資産インフレ時代が始まるだろう。

(六)商品市場に流入する投機資金。

(1)私は先週、商品市場で進行している重大な変化を次のように指摘した。(前回のクラブ9を参照されたい。)
(2)ヘッジファンドの資金の一部が石油市場に流入し、石油相場を暴騰させた。
(3)膨張した投機資金はリスクを取る余裕が拡大し、次に金を目指すだろう。
(4)金が昨年高値457ドルを抜けば、800ドル台の史上最高値が射程に入る。そうなれば、騰勢は商品相場全体に及ぶだろう。
(5)豊商事を初めとする商品株の高騰は商品相場の先行指標で、商品相場との連動性を高めるだろう。
(6)株式市場では過去2年間に鉄鋼、石油、非鉄、海運、化学、総合商社等の構造不況業種から暴騰銘柄が排出し、ハイテクに代わる主役に浮上した。商品相場の上昇トレンドが衰えなければ、市況産業株の人気も衰えない。
(7)東京工業品取引所にゴールドマンサックス初め外国資本が続々と参入している。
(8)ネット証券も商品取引を開始した。
(9)不動産投信に次いで商品投資信託が機関投資家、個人投資家の人気を集めるだろう。

(七)金相場と住友金属鉱山(5713)。

(1)チャート2で、シカゴ商品、ニューヨーク石油、ニューヨーク金の月足を一覧願いたい。

(2)石油は史上最高値を大幅に更新した。シカゴ商品は23年ぶりの、金は18年ぶりの高値に接近している。石油を突破口として主要商品が次々に史上最高値を更新する構えを見せている。
(3)金は先週、急騰して今年の高値に面合わせした。
(4)石油投機で成功した資金の一部が金へ向かえば、石油よりもはるかに小さな市場である金相場は木の葉のように舞い上がる可能性がある。
(5)上の予測が当たれば、住友金属鉱山が人気を集めるだろう。
(6)住友金属鉱山は自社保有の鉱山から金やニッケルや銅の鉱石を採掘し、精錬している。製品市況が値上がりすれば、期間利益よりも保有する鉱山の含み益が激増する。この点はサウジアラビアやロシア等の産油国と同じである。
(7)現在でも住友金属鉱山の含み益は1兆円を大幅に超えると推定されるが、その時価総額はわずか4,400億円で、5兆円のヤフーの10分の1以下である。
(8)資産インフレが金に及べば、外国資本の買収にさらされる可能性がある。

(八)ミサワ(1722)。

(1)直近の株価が反落した。
(2)売り出し株の値決めを8月8〜11日に控えているからだろう。
(3)今週早々に値決めが終われば、下値に用はなくなるだろう。

(九)ダイエー(8263)。

(1)ダイエーは私が繰り返し推奨し、失敗した銘柄である。現状についてフォローしておきたい。
(2)前項で述べた通り、世界中で不動産が暴騰し、日本だけが70年代の安値まで大暴落した。
(3)小泉、竹中政権のデフレ政策が間違っていたことは、政権交代によって明らかになるだろう。
(4)不動産の反騰につれてダイエーの含み益は急増する。ダイエーを追いつめた悪材料は好材料に変わりつつある。
(5)ダイエーなど30社をつぶせと主張した木村剛が設立した日本政策投資銀行は、木村剛自身の乱脈融資で、倒産寸前である。財界展望9月号は金融庁の木村剛に対する検査が甘過ぎると指摘している。
(6)8月6日付日経は、ウォルマートのスコット会長とのインタビュー記事で、日本で新たなM&Aを計画し、ダイエー買収に依然として強い関心を寄せていると報じている。
(7)ウォルマートは終始一貫ダイエー買収の最有力候補であったが、再生機構が介入し、筆頭株主となるに及んで、あきれて手を引いた。
(8)しかしウォルマートが日本最大の販売網を確立して、最強の仕入れ機構と最強の物流機構を構築するためには、どうしてもダイエーが必要である。
(9)ダイエーの悪材料は出尽くした。倒産する可能性はゼロで、いつ、どのように再建するかだけが課題である。