2005/7/4

  2005年7月4日(月)

(一)サイバード(4823)。

(1)6月1日付け日経はリクルートが第3者割り当て増資によりサイバードの株式を取得すると報じた。
(2)しかしその株価算定に疑問があった。すなわち、値決め直前3日間の平均株価17.2万円対して、払い込み株価は18万円であった。第3社割り当て増資の株価は時価より10%程度割引するのが常識で、時価より高い値決めは前例がない。リクルートは株式市場ならば17.2万円で買えたサイバード株をなぜ18万円で買ったのだろうか。もしリクルートが上場会社であれば株主から背任行為として代表訴訟を受けただろう。
(3)サイバードに値決めの根拠を問い合わせた所、過去3ヶ月間の平均株価から算出したという回答であったが、公募価格を時価より高く設定するための苦肉の算定手法であったことに変わりはない。
(4)それならばリクルートはなぜ時価よりも高い株価で株式を取得したのだろうか。クラブ9は相当な事情が潜在しているに違いないと見て、6月13日付けでサイバードを注目銘柄に上げた。
(5)その後、現在までにサイバードが正式に発表した材料は次の2点である。第1に、リクルートが払い込んだ42億円をテコにして、カナダの同業大手エア・ボーンを65億円で買収した。第2に、6月29日の株主総会で新社長が選任された。アメリカ進出と社長交代は重要な出来事であるが、リクルートが出資した意図は依然として不明である。
(6)リクルートは情報のコンテンツで年間1,350億円の経常利益を稼ぐ超優良企業であるのに対して、サイバードはモバイルのトップ企業とはいえ前期に7億円の経常利益を計上した新興企業に過ぎない。格上のリクルートが格下のサイバードの株式を高値で取得したからには、リクルートがサイバードを必要とする事情があると推定するのが常識である。
(7)リクルートは就職、アルバイト、賃貸、旅行等、広範囲にわたり日本最大の情報コンテンツを蓄積している。もし1,350億円の利益の一部をモバイル事業に投入すれば、サイバードの収益構造は革命的に変化するだろう。
(8)アメリカでは2000年にインターネットで首位のAOL(アメリカオンライン)が情報で首位のタイムワーナーを買収するという大事件が起こった。リクルートとサイバードは部分的な資本提携を結んだに過ぎないが、新旧の業態の組み合わせが似ている。
(9)6月13日付で予想したとおり、サイバードの株価は大商いのうちに保合を上放れた。今後の情報開示に注目したい。

(二)相場観。

(1)強気60%。
(2)主力大型株に保合水準を突破する勢いがない。
(3)活路は新興市場と仕手株。
(4)クラブ9銘柄はおおむね順調。

(三)リスク。

(1)衆議院解散、総選挙。
(2)中国景気の一時的調整。
(3)欧米ファンドマネジャーの夏休み入り。
(4)ヘッジファンドの売り仕掛け。