2005/4/18

  2005年4月18日(月)
   ジャパンバッシングと世界同時株安。

 私は滅多に弱気を言わないが、4月11日付で日中紛争拡大のリスクを指摘し、キャッシュポジション(現金比率)を高める必要を述べた。そこへアメリカ株の急落が加わって世界同時株安が進行した。以下にその背景と行方を探りたい。
(一)アメリカの株安の原因。

(1)アメリカの株安の原因はマスコミが全く報道していない金融問題に発している。この点の認識が必要である。
(2)FRBは連続7回公定歩合を引き上げたが、国債相場はわずかに下落しただけで、世界の金融市場に対する影響は皆無に等しかった。
(3)日本とドイツは低金利政策を維持し、アメリカの利上げに追随しなかった。またブラジル、アルゼンチン等、新興国の通貨暴落も起こらなかった。
(4)しかし12兆円のGMの社債が急落した。この点がきわめて重要である。
(5)アメリカの銀行は企業に金を貸さず、企業は無借金、自己資本経営が基本である。しかしその代わりに企業は社債で資金を調達しており、社債が暴落すれば社債に投資している金融機関が窮地に立つ。
(6)アメリカの石油メジャーは大合併によって競争の必要がなくなり、ガソリンの供給増加よりも、価格維持を優先している。そのためにガソリンの高騰が原油の高騰を誘発する異常な状況が生まれた。ガソリンの高騰は大型車中心のGMやフォードの経営を直撃する一方、燃費効率が高いトヨタのプリウスは新車が3ヶ月待ちとなり、中古車にプレミアムがつく異常な状況が生まれた。
(7)そのためGMの業績の早期回復は期待しがたく、12兆円の社債はジャンク債に転落するリスクがある。
(8)その影響は同業のフォードや下請け業界に広がるリスクがある。
(9)このような社債市場の混乱がアメリカ株急落の背景にあるから、問題の解決は簡単ではない。

(二)日本のリスク。中国のリスク。

(1)アメリカの株安が日本株の下げ幅を増幅したが、日中間に発生したリスクこそ日本株急落の原因である。しかし最大のリスクは中国自身に潜んでいる。
(2)中国は共産党一党支配の独裁国家だから、国内の経済問題を解決するために国民の不満を反日暴動に転嫁している。政府主導の反日暴動はテレビの画像で世界中に伝わり、ECは早くも中国への武器輸出の解禁を取り止めた。
(3)中国の高度成長の主役は外国資本であるが、日本はもちろん、日本以外の外国資本も中国投資に慎重となる。
(4)そうなれば、バブル化している中国経済が破綻し、急落し始めた国際商品市況が下げ幅を拡大し、一次産品の輸出で潤っている新興工業国に不況が広がり、世界同時株安となる可能性がある。
(5)中国自身の国内政治も混乱する可能性がある。先週末には反日暴動が上海に波及した。胡錦濤主席以前の中国政府の人脈は江沢民を筆頭とする上海閥で、上海には共産党幹部の利権が集中している。暴動の矛先が共産党幹部の腐敗に向かえば、新旧政権の対立が深刻な内部抗争に発展する。
(6)ちなみに、ヒットラーはユダヤ人500万人を虐殺した。スターリンは2,000万人、毛沢東は5,000万人の同胞を虐殺した。独裁政権は政権を維持するために国民を扇動し、ライバルを殺戮する。共産党独裁の中国政府は収拾を誤れば、内乱となる。
(7)独裁のリスクは日本にもある。竹中大臣は首相の威を借りて民主国家としては異例の独裁的な政治手法を用いてきたから、自民党内部に深刻な対立と混乱を生んでいる。
(8)私はアメリカの自由主義、民主主義に勝る政治手法はないと確信している。21世紀は情報化社会である。情報には国境がない。パソコンが普及すれば、独裁政権は必ず崩壊するだろう。

(三)これからの株価。

(1)通常のリズムならば、今週は絶好の買い場となる。
(2)しかし来週以降に13連休を控えており、その間の国際的なリスクを考えれば本格反騰は困難だろう。
(3)中国政府が反日暴動をあおり立てている状況はテレビで世界中に報道されて、日本人は独裁国家の怖さを知った。買い方には追い証のリスクが発生している。
(4)しかしどんなに大きな悪材料でも「知ったらしまい」で、株価は周知の事実を折り込んでしまう。1週間前に日中問題は軽視されていたが、現在では全国民周知の大問題となった。
(5)リスクの解決には時間がかかるが、世界的な金融緩和の基調は不変で、投資資金は潤沢である。
(6)材料株、仕手株、小型株の一角に人気が集中し、一本釣りにチャンスがある。
(7)主役の交代は避けられないが、連休中に次の主役が浮上するだろう。

(四)ダイエーについて(質問多数)。

(1)前2月決算を発表した。銀行による金融支援4,000億円強を非課税で処理するために、営業外で同額の評価損を計上した。
(2)不採算部門を一掃し、資産の帳簿価格を大幅に切り下げたから、今後は誰が経営しても黒字が出る体質となった。
(3)再生機構は経営権を握り、筆頭株主となったから、これからは好材料ばかりを出してくるだろう。
(4)全上場株の中で、ダイエーほど悪材料を徹底的に織り込んだ株はない。5月の株主総会以後は上昇に転じるだろう。