2005/4/11

  2005年4月11日(月)
  竹中バッシングの背景。
 <自民党による竹中バッシングと中国によるジャパンバッシングと
韓国によるジャパンバッシングの間には、共通の怨念が潜在している。>

(一)竹中バッシングの背景。

(1)私は一貫して竹中大臣の異常で過酷な金融政策を批判してきた。日本人と日本企業は株式で500兆円、不動産で1,000兆円という世界史上空前の財産を失い、ダウ平均株価は5分の1に、日本の不動産は1970年代の水準まで大暴落した。日本の巨大企業30社が、借金が多いという理由だけで公然と倒産の政治的目標にかかげられた。特に、不動産、建設、金融、商社等のオールドエコノミーから大小無数の企業が倒産に追い込まれた。日本人は暴落した住宅のローンの支払いに追われ、日本列島は行き場のない閉塞(へいそく)感に覆われていた。竹中政治が引き起こした資産デフレは、あたかも白昼夢を見るがごとく、正常な日本企業と日本人の体力を奪い取っていった。
(2)私が白昼夢と感じたのは好調な先進国経済の中で、日本だけが構造不況に陥ったからである。例えば、同じ期間にアメリカの株式と不動産は毎年史上最高値を更新していた。
(3)チャート1「アメリカの住宅価格上昇率」をご覧頂きたい。アメリカの住宅価格は長期にわたり史上最高値を更新し、上昇率もきわめて大幅である。

(4)竹中平蔵氏に限らず、日本の大半のエコノミストは不動産担保や株式持ち合い等、保有資産の含み益を信用の基盤とする日本の金融システムそのものが構造不況を招いた原因で、欧米流の自己資本経営に大転換するために大胆な外科手術が必要だと主張していた。
(5)小泉首相は改革論者の代表として竹中平蔵氏を大臣に抜擢し、金融システムの改革を断行させたのである。しかしその手法は例えばUFJ銀行を実質倒産に追い込み、その大口取引先であるダイエー、大京等、多くの巨大企業を政治的圧力によって事実上倒産させた。
(6)竹中大臣は改革の成果を誇示するために生け贄を必要としたのである。例えば現在集計中の大手スーパー3社の2月決算を見れば、イオンとイトーヨーカ堂のスーパー部門は実質大赤字で、ダイエーよりも内容が悪い。恣意的な情報操作によってマスコミを魔女狩りに駆り立て、ダイエーを生け贄に仕立てて火あぶりにするような政治が白昼公然と行われたのである。
(7)いわれなく破産に追い込まれた人と企業の怨念は鬱積(うっせき)し、いつの日か必ず竹中バッシングを招く、と私は予想していた。郵政民営化を巡る自民党内の反小泉、反竹中感情の爆発は起こるべくして起こったのである。
(8)正義も正論も相対的で、価値判断の基準は時代とともに変わる。竹中氏はユダヤ資本の思想を信奉し、日本の金融思想を全面的に否定した。 自らの思想を正義と信じたがゆえに異常なまでに過酷となりえたのである。竹中氏がよって立つユダヤ資本の思想を(四)以下で補足しておきたい。

(二)韓国のジャパンバッシングの背景。

(1)竹島や教科書をめぐる韓国の反日感情の背景にも、日本の竹中バッシングと同じ閉塞(へいそく)感が潜在している。
(2)韓国は日本よりも3年早く、欧米思想(ユダヤ人の思想)に基づいて金融革命を断行した。日本のエコノミストは韓国の成功をモデルとしてハードランディング(強制着地)の政策を断行せよと主張したのである。
(3)韓国は金融革命に成功し、構造不況を脱出したように見えた。しかし財閥が次々に倒産した一方で、主要な銀行と企業が軒並みにユダヤ資本の傘下に入った。
(4)表1の「韓国の大手銀行4行」の外国人持ち株比率をご覧願いたい。韓国の金融市場は完全に外国資本に支配されている。

表1 韓国の大手銀行4行
1 国民銀行  78%
2 ハナ銀行  72%
3 外換銀行  72%
4 新韓銀行  63%


(5)さらに表2「韓国の主要上場企業の外国人持ち株比率」をご覧願いたい。半導体と液晶で世界1のサムスンを初め主要企業が皆外国資本の支配下に入った。

表2 韓国の主要上場企業の外国人持ち株比率
1 サムスン     54%
2 現代自動車    49%
3 LG       37%
4 SK       49%
5 KT       49%
6 ポスコ      67%


(6)ユダヤ資本の論理を信奉する竹中大臣は企業が多国籍化する時代に、資本の国籍にこだわる必要はないと思っている。しかし現実に韓国はユダヤ資本の植民地となり、韓国人はみな外資のために働き、その利益を外資に吸い上げられている。韓国人は今、行き場のない怨念をジャパンバッシングにぶつけているのである。
(7)ノムヒョン政権は国民の閉塞感のはけ口を日本の竹島、教科書、歴史認識に向けて大成功した。すなわち内閣支持率は一挙に20%から50%に急騰した。
(8)竹中大臣はなぜこのような重要な事実を日本国民に知らせずに、ハードランディング政策を強行したのだろう。日本でも大暴落した不動産と株式を外資が一手に買った。現在の政策を続ければ、主要な銀行と企業が外資の手に落ちるのは時間の問題である。

(三)中国の反日運動の背景。

(1)中国の国内事情と韓国の国内事情は酷似している。
(2)過去10年間に中国は驚異的な経済発展を遂げた。しかしその主役は外国資本、外国企業で、特に日本が果たした役割はきわめて大きい。
(3)一握りの共産党幹部と合弁企業のエリートサラリーマンは大金持ちになったが、大多数の国民は貧困状態を抜け出せない。そこで政府は鬱積(うっせき)した国民の閉塞感のはけ口をジャパンバッシングに振り向けて、現在まではそのガス抜きに成功している。
(4)しかしイギリスは中国人を麻薬漬けにしてアヘン戦争を起こし、香港をつい5年前まで占拠していた。イギリスに比べれば、日本は中国の経済発展に深く関わり、大いに貢献している。
(5)アメリカは自由主義と民主主義の普及を国際政治の目標としているから、中国共産党の一党独裁に対する批判をゆるめないが、アメリカを最大の輸出市場とする中国政府は公式にアメリカに反論することができない。
(6)もし日本企業が中国の反日運動にリスクを感じて撤退すれば、中国経済は混乱し、危機に陥る可能性がある。
(7)そのとき国民の不満は一気に共産党の独裁政権に向かうだろう。日本バッシングは危険な両刃の剣である。共産党政権はそれらの事情を熟知しているから、政策転換の可能性はある。

(四)ユダヤ人の金融と日本人の金融。

(1)金融庁は銀行の不動産融資を皆不良債権と断定したから、日本の銀行は不動産融資を封じられた。金融庁は上場会社に対する銀行の持ち株を強制的に22%から7%まで売却させた。金融庁は時価会計の即時導入を断行したから、企業は争って不動産や株式を売却した。暴落した不動産と株式の底値を一手に買ったのは皆外資であった。これが竹中政治の現実である。
(2)日本は危うく韓国の二の舞いを演じるところであった。韓国のようにならなかったのは日本企業が戦後60年間に、土地本位制に対応するために営々として不動産と株式で巨大な含み益を構築していたからである。
(3)日本人は有史以来日本列島に土着しており、土地を基盤とする政治経済システムが確立したのは歴史的必然である。奈良時代の班田収受の法、平安時代の荘園制度、鎌倉室町戦国時代の武力による領地争い、江戸時代の禄高制度を経て明治維新を迎えた。明治新政府もまた土地課税を唯一の財源としていた。第二次世界大戦の敗戦で日本の国土は廃墟となったが、土地を基盤とする金融制度を再構築し、戦後の高度成長の資金を限りなく創造した。
(4)その結果、1980年代に日本は世界第2位の経済大国に躍進し、日本の銀行は世界ランキングの上位を独占するほど巨大化した。
(5)それまで欧米の金融を支配していたユダヤ資本は日本の銀行の台頭を脅威と見て反撃に転じ、銀行融資に自己資本比率8%の規制をはめた。 当時、日本の銀行は無制限に貸し出しを拡大していたから、争って融資の回収に走り、不動産の暴落を招いた。不動産の暴落は担保不足を生み、日本の金融市場はスパイラル状に縮小均衡に陥った。
(6)竹中大臣はユダヤ資本の論理を信奉していたから、躊躇なく日本の土地本位制度を破壊するための金融政策を断行した。
(7)大小無数の企業と銀行が過剰融資、過剰債務の名の下に倒産に追い込まれた。UFJ銀行は金融庁の特別検査を受けて東京三菱の傘下に入り、ダイエーや大京等の主力取引先が実質倒産に追い込まれた。現在も三井住友銀行は半年以上にわたる金融庁の特別検査から解放されていない。
(8)竹中大臣の過酷で執拗をきわめる金融行政は小泉首相の名において行われている。政界、財界で反小泉、反竹中の怨念が蓄積されたのは当然である。郵政民営化をめぐる混乱は潜在的な反小泉勢力が表面化したに過ぎない。

(五)続ユダヤ人の金融と日本人の金融。

(1)正義や正論は常に相対的で、時代の局面によって基準が変化する。
(2)日本人が構築した土地本位制に対して、ユダヤ人が構築した金融システムは完全な対極に位置している。その差は日本人とユダヤ人がたどった歴史に由来している。
(3)ユダヤ王国は3500年前に滅亡し、ユダヤ人は第2次世界大戦後にイスラエルを再建するまで、3500年の長きにわたって世界各地を迫害に耐えながら、流浪した。ヒットラーのユダヤ人500万人虐殺は無数の迫害の歴史の一例に過ぎない。ユダヤ人は迫害を逃れるために不動産を持たず、財産は持ち運びが可能な貨幣、金、ダイヤモンドであった。キリスト教徒とイスラム教徒は戒律によって金貸しを禁じられていたから、ユダヤ人はヨーロッパの金融を独占した。欧米人のユダヤ人に対する反感はユダヤ人固有の拝金思想に由来している。
(4)不動産を持たないユダヤ人の金融は歴史的に無担保で、無担保ゆえに融資金額に限界があった。そのため欧米の企業経営は昔も今も借金に頼らない自己資本経営が基本となった。
(5)竹中大臣はユダヤ資本の論理を信奉しており、日本の不動産担保、或いは株式持ち合いによる含み益経営を前近代的として、排除し、排斥したのである。
(6)それでも大多数の日本企業は竹中大臣の過酷きわまる金融政策に耐えて、資産を守り抜いた。
(7)日本人には土地神話のDNA(遺伝子)が染み込んでおり、1000年の歴史を経て構築した土地本位制度は簡単に崩壊しないと私は確信している。
(8)エコノミストは今でも景気が回復しなければ株価と地価は上がらないと主張しているが、本末を転倒した机上の空論である。私は終始一貫して緩やかな資産インフレの基調を維持すれば日本経済は必ず活力を回復すると主張している。

(六)株式市場に新たなリスク。

(1)竹中大臣が果たした役割、竹中大臣を必要とした時代は終わった。
(2)過去3年間、竹中大臣とエコノミストの弱気論を信じた人は歴史的なビジネスチャンスを失い、大もうけのチャンスを逸した。
(3)これに対して資産インフレの復活に賭けた人たちがビジネスでも株式投資でも大成功したのである。
(4)現にダウ平均株価が低迷した間にも、不動産や株式を守り通した昔の優良株から暴騰銘柄が輩出した。
(5)相場は上昇基調を回復し、人気はハイテク株に広がりつつあるが、重要なリスク要因が2点ある。
(6)第1は、中国、韓国のジャパンバッシングが過激化した場合。中国経済に混乱が起こり、日本経済に悪影響が及ぶ可能性がある。
(7)第2は、関東大震災が発生した場合。日本は政治、経済、文化、情報にわたる中枢のすべてが東京に集中しているから、リスクがきわめて大きい。
(8)ある程度の現金留保に心がけておきたい。