2011/

  2005年3月28日(月)
 15年ぶりに反騰に転じた不動産。
 しかし「不動産」は「動産」に変身した。
 その事実の認識が不動産相場の行方を予想する鍵となる。

(一)的中した拙著「不動産が値上がりする」の予測。

(1)私は2001年6月に主婦と生活社から「不動産が値上がりする」を出版した。私は単に今日の不動産相場の反騰を予想しただけではなく、現在までの4年間に進行した不動産市場の構造変化と価格形成の変化をきわめて具体的に予測することができたと思う。拙著はマスコミでは無視されたが、世界最大のインターネット書店「アマゾン・ドット・コム」でベストセラーとなり、再版、2版を完売した。興味をお持ちの方は、アマゾンの中古本市場で拙著を求めて、細部をご覧願いたい。90年代以降の不動産と株式に対する私の論点は一貫して不動である。以下に大略を述べておきたい。
(2)2000年代の初めに六本木と渋谷で始まった不動産相場の反騰は、日本の不動産相場反騰を告げる指標となった。
(3)相場の変化は常に点から始まり、点から点へ、点から線へ、線から面へと広がる。
(4)六本木と渋谷の面積は小さいが、坪単価は日本最高水準である。株式市場には3000社以上が上場しているが、時価総額の大きなトヨタとソニーが動けば、2社だけでダウ平均株価に影響を与えるのと同じ意味と効果がある。
(5)東京の中でも六本木、渋谷、銀座、丸の内、新宿等の中心部の坪単価は群を抜いて高い。面積は小さくてもその時価総額はその他の日本全国の時価総額を上回るほど巨大である。
(6)1980年代以降、日本の不動産相場は欧米先進国とは対照的な変化をたどった。例えば日本の一流ホテルの料金は80年代には欧米よりも断然高かったが、現在は断然安い。すなわち80年代に日本の不動産は世界で独歩高したが、90年代以降は独歩安を演じたのである。アメリカのグリーンスパンFRB議長は日本の金融政策を分析し、その失敗を反面教師としていると述べている。現在の公定歩合の連続的な引き上げはその成果である。
(7)1990年に世界中で不動産相場が同時に暴落したが、アメリカは不動産投信を組成して徹底的に買い向かい、不動産不況を2年で終結させた。資金量が18兆円に達した1995年以降は毎年史上最高値を更新して現在に至っている。これに対して日本は15年間も暴落を続け、時価総額は
2,000兆円から1,000兆円へ、1,000兆円も大暴落した。史上空前の大暴落に直面して日本が恐慌に陥らなかったのは世界経済史上の謎である。
(8)私は竹中大臣の金融政策を終始一貫、全面的に批判してきた。金融庁が銀行の不動産融資を片端から不良債権と認定したから、不動産に融資する銀行は皆無となった。同時に金融庁は時価会計の即時導入を迫ったから、企業と銀行は不動産の投げ売りに走った。買い手の資金を断っておいて、不動産を売らせたから、凄惨な暴落の連鎖が起こったのは当然である。
(9)その間、外資だけがやりたい放題に買いたたき、ぼろもうけした。

(二)救世主は不動産投信。

(1)私は90年代から一貫してアメリカに習って不動産投信を大量設定すれば、財政資金を用いなくても、民間活力によって不動産相場を再建することが可能だと主張した。
(2)その論点に着目した「主婦と生活社」に強く勧められて、日頃の主張をまとめ、「不動産が値上がりする」を出版した。
(3)私は他を批判するときには常に解決策を提示した。拙著でも例えば「4大銀行がそれぞれ1兆円の不動産投信を設定して担保処分の受け皿とすれば、不動産不況は即座に終結する。銀行は10%以上の利回りで外資にたたき売りすることを止めて、その不動産を集めて投資信託を組成し、預金者に売り出せば、ゼロ金利に悩む顧客は諸手をあげて歓迎する。」と提案した。現に銀行以外の不動産関連業者が不動産投信を売り出し、その株価は3年間で2倍に急騰した。 銀行は今頃になって他社が発売した不動産投信を競い合って販売している。
(4)拙著を出版した翌年に金融庁はようやく不動産投信(リート)の発売を認可した。その資金量は昨年ようやく1兆円に達したに過ぎないが。私募投信を加えれば3兆円と推定される。資金量はまだ小さいが、小さいこそアメリカ並みの20兆円市場に成長するまで、不動産相場の上昇を支えるだろう。

(三)「不動産」から「動産」へ。

(1)アメリカの不動産投信」は90年代前半の5年間に資金量を18兆円に急増させて、不動産相場を完全に支配した。1995年から現在までアメリカの不動産相場は10年連続で史上最高値を更新している。
(2)現在ではアメリカの不動産投信は常に長期国債の利回りを0.5〜1.0%上回る水準で取引されている。FRBの金融政策は国債市場と不動産投信市場を経由して、不動産相場に及ぶメカニズムができた。
(3)不動産投信は巨大な不動産を大企業や大金持ちの手から無数の投資家の手に引き渡した。今日では不動産投信は株式市場で流通し、「不動産」は「動産」に変身したのである。
(4)その結果、日本でも不動産は利回りを指標として売買される時代が始まった。不動産相場はまだ反騰に転じたばかりであるが、価格形成のメカニズムが変化したから、利回りを軽視した投資家は成功がおぼつかないだろう。
(5)拙著を出版した当時、これらの論点を明快に主張した人は皆無であった。今でもエコノミストは不動産の価格形成の革命的な変化に無知である。彼らは自分の目で事実を見ないから、将来の相場についても悲観論を捨てられないのである。