2005/3/14

  2005年3月14日(月)
         株価革命が始まる。
   --- 高株価経営こそ唯一の買収回避策 ---

(一)企業買収を容易にした商法改正。

(1)2004年の商法改正の骨子は次の2点であった。
 第1に、2005年から株主総会の招集権を2分の1から3分の1に緩和した。すなわち34%を所有すれば株主総会を招集して出席者の2分の1の賛成で取締役を更迭し、会社を支配することができる。
 第2に、2006年から外国企業はキャッシュを準備しなくても、株式交換によって日本企業を買収することができる。
(2)第1の法律改正を受けて、ライブドアはニッポン放送の株式の3分の1以上を取得して断然優位に立った。マスコミは大騒ぎしているが、ライブドアは現行ルールの下で合法的に株式を取得したから、阻止することはきわめて困難である。そればかりか、防戦する側の防戦コストが大幅にはね上がる。
(3)来年には外国企業の株式交換による企業買収が可能になる。現状では日本企業の時価総額が欧米企業に比べてあまりにも小さすぎるために、どの企業がいつ外国資本に買収されてもおかしくない。
(4)そのために自民党は「株式交換による買収」の実施時期を1年繰り延べて2007年以降とする修正案を準備した。

(二)高株価政策の競演が始まる。

(1)欧米企業は過去20年間に企業の買収合戦によって、資本の巨大化、市場の寡占化が進んだ。
(2)一方、日本では50%超の株式持ち合いが崩壊し、安定株主が消滅した。代わって外人株主が25%に達した。個別には50%超の企業も少なくない。
(3)こんな時に、株式バーターによる企業買収が可能となれば、日本のいかなる巨大企業も外資による買収に対抗できなくなる。
(4)そこで商法改正の実施期限を1年延長したが、これは「2006年までに企業が独自に買収回避策を講じなさい、2007年以後は政府は救済しません」と宣言したのも同然である。

(三)買収回避の目標。

(1)株価を上げて、時価総額を大きくする。
(2)株価を企業価値にふさわしい水準に引き上げて、時価で買収しても採算に乗らないようにする。

(四)買収回避の方法。

(1)同業との合併による巨大化。(薬品、銀行等の業界で進行中。)
(2)自社株買い。(トヨタ、松下等。)
(3)増配。(アメリカでは税引き利益の半分は株主の物という常識がある。)
(4)不動産、株式等の含み資産を積極的に開示し、或いは決算に計上して、株価を実力にふさわしい水準に上げる。
(5)日本では毎期含み損のみを赤字として処理するから、含み益が一方的に累積する。
(6)その含み益を日本の経営者は会社の財産と考えているが、欧米では株主の財産だから、株主に分配するべきだと考えている。
(7)アメリカの経営者は株主による収奪を免れるために、含み益を現金に換えて、他企業の買収、又は設備投資に投入する。

(五)株価革命は必然。

(1)時価総額拡大のための猶予期限は2007年までの2年弱である。
(2)この間にすべての上場企業は高株価政策による時価総額の引き上げを競演する。株価に無関心な経営者は無能と見なされ、買収されても同情されないから、株価急騰が必ず起こる。

(六)住友金属鉱山(別子)のケース。

(1)一株利益86円をダウ採用225社平均の20倍に買って、1,200円。これが理論的妥当株価で、時価は著しく割安である。
(2)別子が保有する金、ニッケル、銅鉱山の含み益は巨大である。別子が保有する住友グループ株の含み益も大きい。しかし別子自身がその内容の開示にきわめて消極的であるから、実態価値が決算と株価に反映されていない。
(3)すでに南ア、オーストラリアで金鉱山会社の国際的なTOB合戦が進行しており、別子は国際的な寡占化の波に飲み込まれる可能性が高い。
(4)別子は日本最大の資源株である。しかし別子自身は国際的な買収時代の到来に無防備で、例えば金鉱山の推定埋蔵量についても、投資家は直近の具体的な情報を知らされていない。経営者が早急に高株価対策を打たなければ、必ず外資の買収の対象となるだろう。

(七)スパークスとリプラスの権利取り。

(1)3月末にスパークスは1対2、リプラスは1対3の株式分割を行う。
(2)分割による新株を権利落ちの翌日に交付する制度改正を年内目標に進めているが、現在では新株発行までに2ヶ月の事務処理期間を要する。100対1のような大幅分割では、流通株式の時価総額が一時的に100分の1に下がり、投機筋の暗躍で株価の暴騰が起こったからである。
(3)しかし小幅の分割では、2ヶ月間の担保価値の低下を避けるために、権利取り忌避の売り物が出やすい。スパークスとリプラスはそのために、株価が下がったと思われる。
(4)しかし両銘柄は成長期待が大きく、権利取りが有利だと私は思う。
(5)ただし、資金に余裕があること、リスク覚悟のこと、が条件となる。