2005/2/18

  2005年2月18日(金)
 大買収時代と、その着眼点。

(一)資本主義は株式会社主義である。

(1)昨年の商法改正で会社の支配権(株主総会の招集、取締役の更迭等)が発行株式数の2分の1から3分の1に低下した。
(2)すなわち34%の株式を握れば(従来は50%)、株主総会を招集し、出席者の2分の1の賛成で取締役を更迭できる。
(3)さらに来年からは現金を準備しなくても、株式バーターで買収が可能となる。
(4)欧米では過去20年間に合併を繰り返し、時価総額が圧倒的に巨大化したから、来年以降に日本を代表する企業が株式バーターで外国資本に買収される可能性が高い。
(5)「資本主義」の「資本」は「株式」と同義である。すなわち、「資本主義」とは「株式会社主義」であり、「資本主義社会」とは「株式会社の集合体」である。
(6)会社は株主(資本家)の物であり、従業員の物でも取引先の物でもない。
(7)しかるにサラリーマン経営者は資本の論理に無知で、株主権を軽視する傾向が強い。
(8)日本企業は資産規模に対して株価が安いから、外国資本の草刈り場となる条件がそろっている。大買収時代が必ず到来する。
(9)三井住友銀行と大和証券の合併や、東京三菱銀行とUFJ銀行の合併、トヨタの5,000億円の自社株買いや、松下の2,000億円の自社株買い等は、みな買収に備えて時価総額を巨大にするための手段である。
(10)私は常に資産内容の厚い、技術力、成長力の傑出した企業を銘柄選定の基本においている。

(二)ライブドアによるニッポン放送の買収。

(1)フジサンケイグループはサラリーマンが鹿内一族を追放して経営権を握ったが、資本家ではないから株主権を理解せず、軽視していた。経営者は買収を仕掛けた村上ファンドやライブドアに対して「札びらで企業を支配しようとは僭越だ」と語っているが、時代錯誤である。資本主義社会で株式を公開したからには、札びらを切る者が勝者となる。
(2)創業者の鹿内氏は産経新聞を買収し、産経新聞がニッポン放送を設立し、ニッポン放送がフジテレビを設立した。現在は収益力が逆転したが、フジテレビの支配権はニッポン放送にある。
(3)ライブドアはこのような資本構成の虚をついてニッポン放送の35%を取得した。目標はフジテレビの支配である。
(4)その1週間前に、ライブドアは第3者割り当ての転換社債を発行して、リーマン・ブラザーズから800億円を調達した。
(5)ライブドアはダミーで、実際の取得者はリーマン・ブラザーズと推定するのが自然だろう。フジテレビを狙っているのはライブドアではなくユダヤ資本である。ユダヤ資本は「冷徹な資本の論理」を行使するだろう。甘く見るのは危険だ。
(6)村上ファンド(通産省出身の村上氏にオリックス等が出資)が2年前にニッポン放送の20%を取得して、問題点が鮮明となっていた。これをフジテレビが買い取っておけば問題はすべて解決していた。フジテレビは村上ファンドを軽視して、昨年の商法改正まで、何ら手を打たなかった。
(7)電力、ガス、電鉄等の公益事業は、法律によって外国人が支配することを禁じている。テレビ、放送もこれに準じる。
(8)しかし今回のようにダミーを使えば何でもできる。
(9)市場外で株式を調達すればTOBルール(買収しようとする者はTOBを宣言し、公開市場で株集めの進捗状況を開示しなくてはならない)を回避することもできる。
(10)ポイズン条項など商法の整備が遅れた日本では何でもありの百鬼夜行となる。

(三)西武鉄道。

(1)西武鉄道の再建案をサラリーマンが集まって協議しているが、堤義明は実質70%を支配する大株主だから、自分に不利益と判断すればいつでも拒否権を発動できる。
(2)現に村上ファンドは1株1,000円で西武鉄道にTOBを宣言した。会社側はこれを一蹴したが、堤氏が村上ファンドに持ち株を売れば、TOBが成立する。
(3)堤氏は自らTOBによって全株式を買い取り、上場を廃止して直接経営することもできる。
(4)圧倒的な大株主の支配権を全面的に排除するような再建案がすんなりと成立するとは思えない。

(四)帝国ホテル。

(1)小佐野氏の国際興業が帝国ホテルの40%を取得していたが、その国際興業を外国資本のサーベラスが買収した。
(2)サーベラスは帝国ホテルを時価の2倍で売却すれば、買収費用を有利に回収することができる。
(3)17〜8年前に、私はブルネイ(国民の1人あたり個人所得世界一)の国王から帝国ホテルの買収委託を受けた。当時すでに小佐野氏が浮動株を全部買い集めており、不成功に終わったが、今回再燃の可能性がある。
(4)帝国ホテルは無借金、利益剰余金354億円の超優良企業で、皇居前の土地だけでも1万平方メートル(3,000坪)ある。帝国ホテルの資産価値は時価総額600億円(発行株式数3,000万株、株価2,000円)の2倍以上と推定される。
(5)帝国ホテルの経営権の移転を巡り、株価は一波乱が予想される。

(五)住友金属鉱山。

(1)今期予想1株利益60円は第3四半期までの業績から増額修正の可能性が高い。
(2)保有する金鉱山、ニッケル鉱山、銅鉱山の含み益巨大。
(3)石油に次いで金、銅、鉄鉱石、ニッケル、石炭等が需給逼迫、市況上昇でそれらの鉱山は宝の山となり、鉱山に利権を持つ総合商社が人気化しているが、内外に豊富な鉱山を持つ住友金属鉱山こそ、日本でもっとも資源株と呼ぶにふさわしい企業である。
(4)住友財閥は四国の別子銅山から発展した。それゆえ株式市場では住友金属鉱山を別子と呼び、別子は現在も住友財閥の総本家であり、事実グループ企業の株式を大量保有している。(付表参照。)
(5)しかるに住友財閥の中核である別子の経営者はサラリーマン化して財閥の総本家としての見識を持たず、株価や時価総額に対する配慮が完全に欠落している。
(6)別子を買収すれば住友グループににらみが利くという状況はニッポン放送と酷似している。
(7)特に今、カナダ、南アで世界の金鉱山会社の買収合戦が白熱化している。
(8)今期の利益は前期比2倍に激増するにもかかわらず、株価は2年間700〜750円に低迷しており、ようやく保合を脱出しそうな気配が見える。
(9)別子は早晩内外資本の買収の標的となる可能性が高い。

住 友 金 属 鉱 山 の 保 有 株 式
銘 柄
株 式 数
(株)
貸借対照表計上額
(百万円)
伊予銀行
1,926,603
1,487
住友大阪セメント
3,697,867
980
住友化学工業
1,536,570
753
住友金属工業
11,013,607
1,531
住友商事
2,000,500
1,874
住友信託銀行
3,508,000
2,431
住友不動産
1,298,000
1,756
住友林業
10,110,316
12,001
第一中央汽船
5,352,140
1,285
日本電気
7,000,504
5,992
百十四銀行
1,859,128
1,309
みずほフィナンシャルグループ
2,000
896
三井住友海上火災保険
5,699,417
6,315
三井住友フィナンシャルグループ
8,261
6,361
三菱東京フィナンシャルグループ
1,026
1,057
その他 102銘柄
33,146,593
13,372
88,160,532
59,400